【タテスクコミック原作】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 小学生の頃、家族が経営する老舗料亭『橘』で板前をしている父に憧れて、子供ながらに板前になりたいって思うようになった。

 ちょうどその頃、父のように板前になりたいと言い出した高校生になったばかりの五つ上の兄、侑磨が修行見習いとして板場に出入りするようになって。

 ーー私もお兄ちゃんと一緒に修行する!

 祖父や父に何度願い出ても、私は女だってだけで板場にさえ入らせてはもらえなかった。

 それからは、どうして男に生まれてこなかったんだろう?

 男に生まれてさえいれば、板場にも入れたし、板前にもなれたのに。そう思わずにはいられなかった。

 そのせいで、女であることにコンプレックスを抱いていた私は、男の子みたいな服装ばかりしていたし、男の子とばかり遊んでいた。

 さすがに中学に上がってからはそんなふうに思うこともなくなって、男子よりも女子の友人と遊ぶようにもなったけど、性格なんてそう簡単に変われるもんじゃない。

 兄が居たせいか、元々気が強くて負けん気の強い、男の子のような性格だった私は、高校生になった今でも、女子の話題には興味なんて持てないでいた。

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