【タテスクコミック原作】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 高校に入学してまだ半月あまり。

 グラウンド側にある教室の窓から春の麗らかな風がそよそよと吹いてきて、食後のお昼寝にもってこいの、寝心地の良い空間を提供してくれている。

 小学校からの腐れ縁、クラスメイトの宮内すずとお弁当を食べ終えた私は、窓際の席で机に突っ伏して一眠りしようとしかけたところ、

「ねぇ? 侑李、見て見て。あの子だよあの子。あの子が学校一人気の結城《ゆうき》くん。凄い格好良くない? 同中の子に聞いたんだけど、ファンクラブまであったんだって〜。まじヤバくない?」

グラウンドでサッカーをして遊んでいる男子の群れを眺めていたすずの大きな声によって邪魔されてしまったのだった。

「ふ〜ん、そうなんだ。ゴメン、興味ないや」
「出た〜、侑李の"興味ないや"。例のたまに夢に出てくる……王子様だっけ? いくら格好良くてもさぁ、夢でしょ? ゆーめ。そんなことばっか言ってると、いつまで経ってもカレシなんかできないよ?」
「別に興味ないし、そんなもん要らないや」
「また、それ。もったいないな〜。侑李、黙ってたら美人だって、男子の間じゃ結構人気あるらしいのに〜」
「何それ? 気色悪いからやめてよ」
「予想通りのお言葉ありがとう。でもさぁ、その夢に出てくる王子様そっくりの男子がさ、目の前に現れたら、侑李、好きになっちゃうんじゃないの?」
「ハハッ、ないないない。所詮ただの夢だし。きっとテレビか何かで観た子役だろうし」
「夢がないなー、侑李は」

 すずの声で仕方なくグラウンドに目を向けたものの、男子なんかに関心があるはずもなく。

 青空をぼんやりと眺めながら、安眠を妨害されて不機嫌になりつつも適当に返事を返していた私は、すずの言葉通りのことが自分の身に起こるなんて夢にも思っていなかった。

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