【完】スキャンダル・ヒロイン
お酒が入っていた。
だから俺と静綺の一部始終を岬に話してしまった。
それがそもそもの間違いではあったと思う。本人には素直な気持ちひとつ伝えられないのに、他人に伝えるべきではなかったのだ。
思いの外酔っぱらってしまった俺は情けなくも岬に寮まで送られる羽目になる。俺を知り尽くしている彼女はタクシー内でゲロを吐きそうになる俺にも迷惑な顔ひとつせずに介抱してくれた。
撮影中だというのに、人より健康な体でもないと言うのに何故酒なんて飲んでしまったのだろう。
根本的に俺は間違っているのだと思う。
ふわふわとした意識の中俺を抱えて寮に入って行く岬。
玄関まで迎えにきた山之内さんと坂上さんはえらく心配そうな顔をしてて
その後ろで昴と並んだ静綺の表情がえらく冴えないように見えた。
今日こそ素直になろう。いつも俺の為にお弁当をありがとうって素直な気持ちで伝えよう。そして昨日の事はちゃんと謝ろうと、決めたはずだった。
「もー、お前何やってんだよ。酒弱いくせに」
岬の腕から迷惑そうな顔をした昴が俺の体を引き寄せる。
なんつー頼りがいのある男だ。ぐうの音も出ずに気持ち悪いのもあってか、そのまま昴の肩にもたれかかる。