【完】スキャンダル・ヒロイン

「静綺ちゃんの話も聞いてるけど、昴とイイ感じなんだってねぇー」

「いえ…全然そんな事ないけど」

私の事を、元カノの前でベラベラと喋っていたのを知ってますます惨めになる。

「真央すっごく応援してたー。昴とお似合いって言っててぇ。
今日静綺ちゃんに会ってあたしもお似合いだと思ったから応援しますねぇー」

余計なお世話だ。段々自分の性格が悪くなっていく。

真央が私と昴さんの事を応援しているのもムカつくし、惨めにしかならないんだよ…。お似合いなんて全然思ってないくせに。

「それにいつも真央がご迷惑をかけてスイマセン。真央って口は悪いけれど本当はすごく良い人だから仲良くしてあげてね。
誤解されがちだけど付き合ってた時からすごく優しかったから…」

聞きたくない。もう何も聞きたくない。自分の方が真央を知ってるって言いたいの?そこまで考えて当たり前か、と思った。

彼女は真央と付き合っていた訳だし、あいつだって彼女に見せる顔は普段とは違うだろう。私の方があいつの事を知っているなんてそれは思い上がりだ。

それに真央があんなに安心しきって酔っぱらう事が出来るなんて、彼の好きな人はやっぱり彼女なのではないか。

―――――


それから真央とは何となく数日ぎくしゃくしてしまったままだった。

挨拶は交わすけれど互いに笑顔はなくって、どこか余所余所しい。普通に話せばいいのに、好きだと意識し始めた時からその普通がどうしても出来なくて。

こんな事になるならまだ出会ったばかりの頃のように意地悪を言われて、悪態をつかれていた方がまだマシだ。何となくすれ違ってしまって、それを止める術すら分からなかった。
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