【完】スキャンダル・ヒロイン

「ほらさっさと用意して行く。あんた昨日言ってたじゃない。今日はりっちゃん達に誕生日パーティー開いて貰うんでしょう?!
行った行った」

「でもッ…必修じゃないし…」

「雨降ってるから傘持っていくのよ。本当に嫌だわー…今日は天気予報で1日晴れだって言ってたのに…」

ブツブツ文句を言いながら、お母さんは窓から空を見つめる。
今日は大学に行く気分になれなかった。

だって心理学だし、大講堂だし、必修じゃないし。そんな事を言ってたらいつの間にか単位を落として卒業も危うくなってしまうかもしれない。

けれど心理学は全く私の専攻している食物栄養学科とは関係はないのだ。単位を取る為だけにある科目なのだ。

そのせいで大講堂という広い講義室で、違う学部の学生とも顔を合わせてごちゃごちゃした場所で授業を受けないといけない。

それに欠伸が出てしまうくらい暇なのだ。大人数というのもあって授業が始まる時に出席確認をした後に教室を出ていく学生も多い。


ちらりと窓に目を向けると雨が降っている。ますます行きたくない。

けれど今日はお母さんの言う通りりっちゃん達が誕生日パーティーを企画してくれていて、行かない訳にもいかないだろう。

重い腰を持ち上げて、大学に行く準備を始める。


バスで駅まで行って、駅から大学のある3駅を乗り継ぐ。
通勤ラッシュ時間は過ぎたかと思ったのに人がゴミのように溢れていて、うんざりしてしまう。
< 329 / 347 >

この作品をシェア

pagetop