【完】スキャンダル・ヒロイン
毎日毎日彼の出演しているドラマや映画のDVDを見て、坂上さんに教えて貰ったオンエア情報のバラエティを見て
テレビの前で応援をすると彼に告げた筈なのに、見れば見る程切なくなって、切なくなった後には会いたくなる。
一緒に過ごした日々を愛しく思う。ここ数日寂しくなかった日は一度たりともない。
そんな気持ちもいつか忘れていくのか、想い出となっていくのか。 忘れていって思い出になるのはもっと寂しかった。
画面越しに触れても、冷たいだけ。
画面越しに何かを言っても、返事は当たり前だけど返ってこない。
本来ならばそれが当たり前だ。一緒に過ごした日々が夢のような時間だったのだから。一緒にいた時間があるからこんなにも欲張りになってしまった。多くを求めすぎた。
叶うはずのなかった恋。
いつか忘れられるはずだった。たっくんを忘れて、真央を好きになれたように。けれどこの胸のつっかかりは――。
「ねぇ静綺、今日本当に良かったの?」
真後ろに座ったりっちゃんがこっそりと話を掛けて来る。
「えー?嬉しいよ。誕生日パーティーなんてさ」
「そういう事じゃなくってさ…うちらと一緒でいいのかなーなんて」
「りっちゃんたちが居なかったら誕生日祝ってくれる人いないんだけど。寧ろひとりだし」
聞きずらそうにりっちゃんが訊ねてくる。
「姫岡さんから連絡とかないの…?」
「ないよーないない。寮出てから一切ないし。大体うちらは寮内での繋がりであって
私が寮を出て行ったら関係のない人だもん…。私の誕生日、真央が覚えてくれている訳ないし…」