【完】スキャンダル・ヒロイン
’ん?どうした?’
’何でもない…’
伝える機会はいくらでもあったはずなのに
’誰がッ!でれでれなんてしてねぇだろ!あいつが勝手に!
あ………まさかお前ヤキモチを妬いてるな?’
’妬いてるよ……’
逃げて逃げて、心の中に伝えきれていない大切な気持ちが沢山あったのに。
目を閉じて見ても、瞼の裏に浮かぶのはあなただけだった。
見ないようにしても、私の心をこんなに深くまで揺さぶるのも、また……。
どうして大切な気持ちを、こんな素敵な気持ちを、抑えて自分の中で終わらせようとしたのか。
意地悪な笑顔も、鋭い視線も、その整った口から飛び出る素直じゃない言葉も天邪鬼な性格も知れば知るほど好きになっていった癖に。
大講堂に教授が入って来る。するとざわついていた構内もシンと静まり返り、マイク越しに教授の声が響き渡る。
ふと窓を見ると、雨はすっかり上がっていて太陽の光が差す空に七色の虹の橋が架かっていた。
――伝えていない言葉があった――
――それは単純すぎる一言で――
――それでも私の中で芽生えた素敵な気持ち――
ガタリと音を立てて立ち上がったら、一斉に皆が注目して再び構内は静かなざわめきに包まれた。
「授業始めますよ」マイク越しに教授の声が響いたけれど、私は鞄を持ち立ち上がった。
後ろを振り向くと、りっちゃんは嬉しそうに笑っている。
「りっちゃん、私…行かなくちゃ…」
「うん。分かってるよ」