【完】スキャンダル・ヒロイン

「ブスが…あまり調子に乗るなよ?」

そう言い残し部屋を出て行った。

…マジで何なのあいつ。

鍵を掛けようと扉の前へ行くと、少し離れた廊下で姫岡さんは足を押さえて痛がっていた。

自分で壁を殴っておいて…。その惚けた様子に思わず笑いがこみ上げた。…あいつマジで馬鹿なんだ。容姿だけは人の何倍も優れているけれど…ただの馬鹿なんだ。


グリュッグエンターテイメント。

詳しくは知らないけれど…大滝昴が所属している事務所ならば一流の大きな事務所であるのは間違いないだろう。

そしてどこか古びた鉄筋の不気味な芸能事務所の寮。新設された寮もあるというのに、何故か取り壊されずに鬱そうとした木々に取り囲まれた不気味な建物。

そこには、年齢不詳のチーフマネージャーと自称超超超人気イケメン俳優。…そしてまだ会った事のない数名の住人。

不安は山のようにある。この夏は……本来であるのならば彼氏になる予定だったたっくんと大学最後の楽しい夏休みを過ごす予定だった…。

人生史上最悪の失恋をしたばかりの私が出会ったのは、人生史上最悪の男だった。

これ以上の最悪を更新される事は…ないはず。そう信じたい。

棚橋 静綺 まだまだ21歳。これからの人生楽しい事はあるはず。私の希望に満ち溢れた明日は一体どっちだ?!
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