【完】スキャンダル・ヒロイン
素っ頓狂な声を出して姫岡さんが私の後ろでぶるぶると震えている。
ちょ、ちょっと待ってよ。でっかい図体をしといて、何故私の後ろへ隠れる。いつもの威勢の良さはどうしたって言うのよ。
暗闇の中で黒い大きな人影がうごめく。
頭が真っ白になりパニックになった私達は、互いの両手を強く握りしめ合ってその場で大きな悲鳴を上げた。
「「ギャーっ!」」
ぱちんと電気が点いた音がして、ゆっくりと目を開けると
私の手を握り締めたまま姫岡さんはその場で間抜け面をして腰を抜かしていた。
そして私の視線へ飛び込んできたのは――
それは衝撃だった。まるでテレビ画面越しから飛び出してきたように完璧な容姿をした長身の男。
驚く程きめ細やかな毛穴ひとつもなさそうな綺麗な肌と、大きく真っ黒の瞳が綺麗な幅の広い二重の線を描く。
緩くパーマを充てた茶色のふわふわの髪の毛。口角を上げてニッと笑う姿はまるで白馬に乗った王子様。
こんな所にいたのですね。ずっとあなたを探していました。運命の人と出会うのはいつだって突然なのだ。しかし何故だろう。この既視感。…この人、どこかで見た事があるような。
「なーにこんな所で腰抜かしてんだよ。相変わらずビビりで肝っ玉の小せぇ男だなぁ、真央――」
その白馬に乗った王子様は、腰を抜かして口をパクパクさせる姫岡さんの名前を呼んだ。
私の手は握ったままでその力は段々と強くなる。目の前の男は私と目が合うと、再びニッと優しそうな笑みを向けた。
そこで気づいてしまったのだ――。
「お、大滝昴――?!」
運命の人と出会うのも
恋が訪れるのも
いつも突然だったのだ。