【完】スキャンダル・ヒロイン

「えー!昴、瑠璃のDVDも見てよー」

「はは、今度事務所行ったら貰ってくるね。それにしても相変わらず瑠璃さん可愛いね」

「もぉー昴こそ相変わらず口が巧いんだからさぁ」

キッチンからちらちらと視線を送る。

なんていう…雰囲気の柔らかい人だろう。 気が付けば皆昴さんの側に集まっているし、彼の明るい笑い声はまるで窓際から差し込む眩しい光りのようだ。

すっごくかっこいいのに着飾った所がひとつも無くって、大人気芸能人なのにどこか気さくで話しやすい。

分かる。物凄く共感する。世の中の女の子たちが虜になっちゃうの分かるよ。


昴さんひとり居るだけでパッと明るくなってしまった空間の中で、陰湿なオーラを放つ男がひとり。

ダイニングテーブルから離れ、ひとりソファーに寄りかかり不機嫌そうな顔をする姫岡さんから黒いオーラが出ている。

「ぷっ。それにしても昨日は傑作だったなぁ。
真央ったら俺を幽霊と間違えて、女の子の手を握り締めて床に腰抜かしちゃってるんだもん」

ちらりと昴さんが視線を送ったら、ソファー越しから姫岡さんの鋭い視線が真っ直ぐに彼に向かう。

瑠璃さんと豊さんは顔を見合わせて、ぷっと小さく笑う。それに更に姫岡さんはご立腹のようで、ソファーから立ち上がりその場で地団駄を踏んだ。…まるで子供のよう。

「そ、それはそこにいるブスがッ……幽霊だ幽霊だ騒ぐからでな!」

何故か矛先がこちらへ向けられる。
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