かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
「昼食はどうしますか?」
「んー、私はガッツリ気分かな~」
「ことはとくれはさんは、カフェでは飲み物だけ?」
「ケーキの誘惑をがんばって振り切りました」


前には哉太さんとくれは、後ろに智遥さんと私という並びで、ひとまずカフェから歩き出す。

ワイワイと言葉を交わし、ランチの店はこの先にあるハンバーグの美味しいビストロで決定したところで、ふと思い出したことがあった私は隣の智遥さんに耳打ちする。


「あの、智遥さん」
「ん? どうしたの?」


歩きながら優しく向けられる茶色の瞳にきゅんとしつつ、言葉を続けた。


「今、思い出したんですけど……一緒にツツジヶ丘公園に行ったとき、智遥さん、ぶつかった男の子と別れたあと、私のことじっと見ながら『嫌だな』って言ったじゃないですか。あれって、どういう意味だったんですか?」
「……そうだっけ?」


あ。この反応は、絶対覚えてるやつだ。

綺麗な微笑みで躱そうとする彼に、負けじと拗ねた視線を向ける。
だって私、あのときすごく動揺したんだから。今さらだけど、理由があるならちゃんと知りたい。
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