かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
もともと嘘がつけない性格なのだろう。俺が会う“彼女”は隙だらけで詰めが甘く、ともに過ごす時間が長くなるにつれ仮説はどんどん信憑性を帯びていく。

入れ替わりが間違いないと確信できたのは、二度目に会った際、ランチを楽しみながらの何気ない会話の中だ。


『お酒、好きなんだ?』
『はい、とても──』


事前の調査でオマケ的な扱いで知っていた情報が、まさかこんなところで大いに役立つとは。

立花くれはは相当な下戸のはずなのに、あのときの“彼女”は悩む素振りもなくうなずいていた。

思い出したのは、この見合い話を持ちかけられた定食屋で、立花専務が見せてくれた写真だ。

もとからの優しい印象の目をさらにとろんと緩めながら、はにかむ女性。
双子の姉だと説明された彼女は、その手にアルコールと思われるグラスを持っていた。

そして実際に俺の行きつけである店で美味しそうにワインを飲む彼女を目にして、自分の考えが間違いではなかったことを再確認する。

──やっぱり、思った通りだ。

俺の直感は正しく働いていた。自分がやけに心惹かれたあの写真の女性と今目の前で機嫌良く笑っている彼女は、同一人物だったのだ。

これで、ようやく胸のつかえが取れた気がする。……会う前から後も、俺はずっと、たったひとりの女性だけを特別に感じていたんだって。
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