東堂副社長の、厳しすぎる初恋 +7/18

六月末日夜九時。
東堂大毅はマンションを見上げていた。

帰国予定が数日早まったのである。

今日はちょうど叶星の派遣社員契約の最終日にあたる。どこか食事に行こうと誘うつもりだった。
でも、叶星がいるはずの部屋は暗い。

昨日から何度かかけている電話も繋がらない。
電源が入っていないというメッセージが流れるだけだった。

会社には来ていたということはわかっている。
仕事が一段落した夕方に彼女の席に行ってみたが、一足遅かったようで隣の席の女子社員から封書を渡された。

『もし、副社長がいらしたら渡してほしいと頼まれました』
『ありがとう。もし? もし俺が来なかったらなんて?』

『その時は、私が帰る前に黒崎さんにお願いしようと思っていました。ただ……』
そこで彼女は表情を曇らせて言い淀んだ。

『西ノ宮さんは、副社長が来なかった時は捨ててくださいと言っていましたが』
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