溺愛しすぎじゃないですか?~御曹司の初恋~
あのキスの後も何も無かったかのように私の手を引きデートを楽しむ先輩に戸惑いつつも、いつの間にか先輩のペースに乗せられ私も楽しんでいた。

朝十時過ぎにここに着いてから約六時間。
四時過ぎをまわり夕飯はお酒も飲みたいからと先輩のマンションに一度戻り、車を置いて食べに行くことにした。


「最後に本屋寄っていい?」

「はい。私、女性誌の方見てますね。」


入口でそれぞれの目当ての棚に別れ、私は雑誌を立ち読みしながら先輩が戻って来るのを待った。


「李子?」


先輩の声ではなく、懐かしい声で名前を呼ばれた。


「一くん!」


目の前に三月に遠距離になるからと別れた元カレ関根一勝が立っていた。
彼は今名古屋にいるはずなのにと驚いていると、彼も思わぬところで私に会い驚いているようだった。


「久しぶりだな。元気にしてたか?」

「う・・ん。一くんも元気そうだね。」


嫉妬深い先輩が来る前に離れなきゃ。
話もせずに『じゃあ。』と離れようとすると『なあ。』と話を続けようとする。


「ごめん、人待たせてるから。」


彼とは反対側に行こうと一歩踏み出した時、腕をとられ動けなくなった。


「離して。」

「それって、彼氏?」

「一くんに関係ある?「そう、彼氏だけど?とりあえず彼女の手離してくれるかな。」」


振り向けば彼の後ろに先輩が立っていた。
しかもその表情は不機嫌・・・、いや般若に近い。


「李子、買い物も終わったし行くよ。」


彼の横をすり抜け、彼から私の手を離すとしっかりと手を握り直し足早にその場を後にした。
無言で手を引かれ駐車場に停められた車まで戻り中に入ると思いっきり抱きしめられた。


「あれって関根だよな。あいつ地方に行ったんじゃなかったっけ?なんでココにいたの?」

「知らない。私も驚いたけど、彼も驚いてたみたいだから。」

「・・・李子、久しぶりに関根に会って戻りたいと思った?」


えっ?私が彼とよりを戻したいと思ったと思ってんの?ムカつく。
今は先輩と付き合ってんのに、そんな簡単に揺れると思われるなんて。
確かに先輩が私に対して思ってくれてる気持ちに比べれば、全然足りないけど。
先輩の胸をグッと押しのけ離れた。


「大輝は私がそんな尻軽だと思ってるんだ。元カレが現れたら、大輝がいるのに直ぐによりを戻すような。帰る。」

「えっ?」


私の怒りに驚き動きが止まってしまっている。
その隙に助手席のドアを開け車を降りようとした。
瞬間、腕をグイっと引かれ、また先輩の胸に逆戻りだ。


「ごめん。関根の事を李子が『一くん』って呼んでるし、腕を引かれたの見てイラついて、李子に、李子を試すような事言った。李子はアイツから直ぐに離れようとしてたの見て知ってるのに。ごめん。」


見てたんだ、ほぼ最初から。


「うん。もう帰ろ?それにさっき駐車場の清算したから早くしないと追加取られるよ?」


この雰囲気を変えたくて言った言葉が思った以上に先輩にきいたのかキョトンとした後、爆笑された。『この状況で駐車料金の心配するって。』流れ的には的外れなのはわかって言ったのに!とプウっと膨れていると『ごめん。帰ろっか。』とチュッと優しいキスをし、車を走らせた。


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