片想い歴、10年。
ゆっくりと車椅子を押しながらも、話しかけてみる。



「結梨亜ちゃん、お昼ご飯多かったかな?」



小さく首を縦に振ったことがわかる。



「そっか。じゃあ、もう少し減らすように栄養士さんに伝えておくね。あ、好きな食べ物とかある?食べたいものとか。」



しばらく考え込んで、フルフルと首を横に振る。



結梨亜ちゃんの病室が近づいてきたから、あそこだよ。と伝える。



「結梨亜ちゃん、中にもう1人先生がいるから、今日はお菓子パーティーをするよ!色んなお話しようね!」



にこりと笑いかけると、不思議そうな顔で頷いてくれた。



がらりとドアを開けると、穏やかに微笑んだ向坂先生が立っていた。



「結梨亜ちゃん、この先生は、結梨亜ちゃんの怖いこととか、嫌なことを聞いてくれる先生だよ。向坂先生って言うんだ。」



「こんにちは、結梨亜ちゃん。精神科ってわかるかな?俺はそこの先生。結梨亜ちゃんの怖いこととか聞くから、いつでも頼ってね。」



結梨亜ちゃんの目線に合わせて、優しく挨拶をする向坂先生。



結梨亜ちゃんを見ると、何故か震えている。



「結梨亜ちゃん?どうしたの?怖くなっちゃった?」



私がそう問いかけると、縋るような目でこっちを見てくる。



そっと結梨亜ちゃんの近くに行って、頭を撫でる。



「大丈夫、大丈夫。ゆっくり慣れていこうね。・・・向坂先生、私と2人にしてもらっていいですか?男性恐怖症かもしれませんし。」



「わかりました。一旦出ますね。」



向坂先生が出てからしばらくして、震えは落ち着いた。

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