ねぇ確信犯、うるさいよ
「やだよ」
やけにクリアに聞こえたのは、手首に感じる違和感のせい。
「離してよ」
「やっと捕まえたんだ、離すわけない」
「離して!」
椅子から立ち上がると、彼も立ち上がった。
ぐい、と手首を引かれる。
「う、わっ」
顔が近い。近い、近いよ、田中。
いやだいやだと首を振って逃げようともがくけれど、手首に巻かれた彼の指がよりきつく侵食してくるだけ。
どうして、いま、自分の存在を強調してくるの。
細い指、だけど太めの関節、深爪気味の指先。
「田中、離し……」
「やだ」
ギリ、と、指がくい込む。
爪がくい込まなかったのは幸い?それとも、今日のために爪を切っていた計画犯?