壊れる世界と不死身の子
第10話〝愛情〟

一行が部屋へ戻ると
「はぁ、心臓止まるかと思った。」
緋色がそう言った。
「緋色がイザ様に言い返した時は死んだと思ったよ。」
セトが笑顔でそう言った。
本当に思っているのか?
あの時、セトが魔王に見せた顔、あれは‥‥殺意だった。
怯えなんて一切ない。
「セト‥‥お前‥‥」
何か言おうと思ったけど、やめた。
セトから何か違うものが感じられたから。
はっきり言って、死ぬかと思った、怖かった。
「緋色‥‥どうしたの?」
ビクッ
「なっ何でもない。」
突然の言葉にびっくりしてしまった。
「それより、緋色。さっき、あっさりお嫁さんになること認めたよね?よね!」
「え‥‥あー、まぁ一応。」
もし俺が嫁になることを断ったら、他のやつを拐いに行くだろう。
それに‥‥なんか、やだ。
「ど‥お‥し‥‥たの?え?え?素直‥だね。」
驚いた顔をするセト。
「別に‥‥」
セトが目をキラキラさせながら、緋色の前で口を押さえながら立っている。
うぜぇ。
数分後
「あっと、お取り込み中悪いんだけど、俺ら帰るな、もう寝る時間だし。」
ルーガスがそういって、みんなが頷く。
「じゃあ!私たちは帰ります。」
丁寧に礼をしてそう言ったティールを先頭にみんな帰っていった。
「緋色、先お風呂入りなよ。」
「あっ、うん。」
タッタッタ
あれ?改めて考えてみたら‥‥‥
今、2人きりじゃん!!
まずい、俺って一応嫁になるって言っちゃったし、何かしてくるんじゃ!?
今入ってるお風呂に入ってくるとか‥‥。
そんなことを思いながら、今日流した汗や血を洗い流していると。
「緋色。」
「はいっ!」
咄嗟に返事をして変な声になってしまった。
「どうしたのっていうか、ここに服置いておくから。」
「え?あー、はい。」
意外だった、悪魔だから‥‥まぁ、セトはヴァンパイアなんだけど、人権とか気にせず、恥ずかしさとかも気にせずに普通に入ってくると思っていた。
でも、ちゃんと守ってくれていた、お風呂の扉に映るセトのシルエットがなんだか懐かしかった。

懐かしかっ‥‥た?
俺には記憶がない、小さい頃の記憶がまったくないのだ。
今思い出せる1番古い記憶は、病院の白くて綺麗な天井だな。
その後確か、天宮さんが来て、あっ、天宮さんっていうのは、看護師さんだ。
天宮さんが俺の名前や年齢を教えてくれた。
そして、そこからわかったこと、俺には親がいない。
親の名前も知らない、いや聞かなかった、天宮さんに聞こうとしたらいつも悲しそうな顔をするから、聞かなかったんだ。

まぁ、しょうがないな、俺が聞かなかったのが悪い。
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