捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 それがどうして気付けば恋人になっていたのか。なぜ彼が社員でしかない私に告白しようと思ったのか――思い返しても不思議なものである。

 最初は不安だったものの、金銭感覚や住む世界の違いというものはあまり問題にならず、極めて順風満帆な日々を送り、やがて結婚の約束をするまでになった――けれど。

 私は結婚式当日、ウエディングドレスを着た状態で捨てられたのだ。

(……思い出したくなかったな、あんな男のことなんて。もう三年も前のことなのに)

 軽く唇を噛んで、忘れたい過去を振り払おうとする。

 そのとき、ふと泣き声が聞こえた。

「あ、ごめん。ちょっと行ってくる」

「はいはい、行ってらっしゃい」

 芽衣子に断りを入れてから、すぐ泣き声のした方へと向かう。

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