捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 再会を果たし、俺の望んだ通りに結婚してからも翠はときどき金のことを口にした。あの苦い言葉を思い出させてくるのがやるせなくて、かっと頭に血が上ったのを覚えている。

 指輪に触れて、指先を絡めてみた。こんなふうに手を繋ぐと、自分自身に翠を繋ぎとめているようで満たされる。

「ん……」

 また小さく声がした。

 惹かれるように唇へキスを落とす。

「俺を好きじゃなくてもいい。結婚を受け入れた理由が打算でも構わない」

 指輪を受け取ってもらえただけでうれしかった。たとえそこに彼女の気持ちがなかったとしても。

「お前を手放したくない」

 この愛は一方通行で、きっと永遠に返ってこない。

「――俺だけのものにしたい」

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