捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 そっと翠の目尻に触れる。

 そこに触れると彼女はいつも目を細めて笑った。あの顔が好きなのは今も変わらない。

 俺が強引に翠を手に入れようとした夜、ひどくショックを受けたように泣いたのを覚えている。その顔を見て、どうして一度でも憎んだのか、あの日の裏切りに復讐してやろうと思ったのか、自分の狭量さを悔やんだ。

 本当はあの夜を最後に、今度こそ彼女の前から去るつもりだった。そうすればもう泣かせずにすむからだ。

 俺から守るために手放そうとしたのに、そこで知ったのは息子がいるという事実。

 ほんの一瞬前まで考えていたことを忘れ、結婚を申し出ていた。彼女を手に入れられるかもしれないと期待して。

 視線を下げて、固く握り締められた翠の左手を見る。細い薬指には渡した指輪がはまっていた。

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