捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 そういえば、と思い出す。涼さんは私が何度も会話の中で出した芽衣子の名前を覚えていなかった。覚えていないのかと嫌味を言ってしまったけれど、冷静になった今ならわかる。あの人は『私以外の人間』に興味を持っていなかったのだ。

「許してやれとは言わないけど、夫婦になることはできるんじゃないかなぁ」

「無理だよ、芽衣子」

 首を横に振って視線を下げる。

「どう頑張っても、あの人とはまともな家庭を作っていけない。私が望んでる家族にはならないの」

「……昔から憧れの家庭像があるよね。なんとなく理由はわかるけど」

「え、そう?」

「言いたくないけど翠って『搾取子』だもん」

「さくしゅこ?」

「そ。親に搾取されてる子供」

 ずきんと胸が痛む。

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