捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 手は貸さなかった。言わなくても鳴がそれを望んでいないのは明白だったし、下手に手を出せばむしろ機嫌を損ねる可能性が高い。これが翠ならママの言うことだからとおとなしくなるのだろうが、父親の俺はそこまで鳴に対して強制力を持っていない。

 鳴が靴を履き終えるまで少なくとも十五分は待った。

 その間ずっと見ていた俺を、不思議そうな顔で見上げてくる。

「パパは、パパがやる、っていわないね」

「言ってほしかったか?」

「ううん。ママはすぐいうの」

「翠にも事情があるだろう。俺はひとりでやりたいだろうと思ったから言わなかった。それだけだ」

「なるくん、パパすきだよ」

 にこ、と笑って言うと、そのまま玄関のドアに手をかける。

 嫌いと言ったかと思えば、好きだとも言う。子供は難しい。

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