ウルルであなたとシャンパンを

「教えてくれれば良かったのに」

うらめしげに見上げると、ルカさんはその様子もおかしいと言うように小さく声を漏らして笑った。

「やっぱり、コドモみたいだよね」
「……うるさい」

サーキュラーキーでの出会いから、約2時間。

香耶達は港沿いの道を歩き、今はロックスと言われる古めかしい雰囲気を残した区画に来ていた。

入り組んだ小さな路地に歴史を感じるレンガ作りの建物が並んでいる様は、まるでタイムスリップしてしまったかのように感じられる。

目立たないように修復や補強等がされている部分もあったけれど、それもごく自然に街に馴染んでいた。

今、香耶達がいる場所も、建物と白っぽい石を積み上げた壁に囲まれた中庭のような場所で、ちょっとアンティークなテーブルセットと白いパラソルが似合うステキな場所だった。

特に高級店ではないようなのに落ち着いた品のある雰囲気の中で、何組かの人々が和やかにティータイムを楽しんでいる。

それは、香耶達も同じで。

テーブルの上には色鮮やかな赤いフルーツのタルトと、艶のあるチョコレートケーキ、それぞれの飲み物が並べられていた。

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