ウルルであなたとシャンパンを

恥ずかしいから、と、付き合っていることを共通の知人には秘密にするよう言われた時に、香耶は気づくべきだった。

見る目がない、と言われれば、その通りなんだろう。

仕事だからと言われて会えなかった休日の日でも、その理由を疑ったことはなかったし。

香耶の部屋に泊まるより、帰ることの方が多いことにも、疑問を持ったことはなかった。

部屋が散らかっている、という理由で、彼女の部屋にばかり入り浸っていた人を知っていたせいかもしれないけれど。

忙しくて、とか、明日が早いから、とか、そんな理由が重なる度に、一緒に住む日を思い描いて、幸せに浸っていたような気がする。

親と住んでいるんだ、と言った背中をぎゅっと抱きしめて、いいことだと思う、と言った時、あの人はどんな顔をしていたのか……

「いい年して、親と同居なんて、恥ずかしいよな」

そう言った彼を、香耶はかわいいとさえ思って……その後に続いた言葉を、嘘だなんて思いもしなかった。

「こうやって、香耶と一緒に暮らせたら……幸せなんだろうな……」

好きだ、と言われた時よりも、付き合おうか、と言われた時よりも、この時が、一番うれしかったのに……


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