ウルルであなたとシャンパンを

あの夜、彼は事実を知らされ愕然とする香耶を見て、とてもめんどくさそうに、ため息をついて言ったのだ。

「俺が既婚者だって、うすうす気づいてたんだろ?」
「知らなかったよ!知ってたら……知ってたら、付き合ってなんかなかった!」
「最初はそうだったとしても、途中からはさ、なんとなく気づいてたんじゃないの?」
「……彼女はいないって言ってたじゃない」
「ああ……あの時ね。あの時、"彼女"がいなかったのは本当」
「……意味がわからない……何言ってるの?」
「だから、あの時、誰とも付き合ってなかったのは本当。ただ……"嫁"はいた、ってだけ」

絶句する香耶に、彼は当然のことのように言ってのけた。

「いや、だって……俺の年で、結婚してないなんて、ありえなくない?」

言われた瞬間、ブチっと香耶の中で、何かが切れた音がした。

「ありえなくないわ~!!」


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