君と優しいバレンタインを
「何を待てばいいわけ?これ以上近付くなって?家なのに?明日は土曜で、だから泊まりに来てくれてんのに?」
「…し…質問攻めやめてよ…。」

 紗弥の頬に昴の指がそっと触れる。気恥ずかしくなって、紗弥はギュッと目を閉じた。
 ちゅ、という甘くて優しい音が少し上の方でした。紗弥の額に残る、小さな熱。

「な…なに…?」
「いつだってお前がいいよ。今思い浮かぶ欲しいものって、それくらい。モノじゃないだろ?」

 紗弥の顔がかあっと熱くなる。

「そんなベタなこと言うの!?」
「言ったら叶えてくれっかなーって。」
「…それ、今日欲しいって意味?」
「今日も欲しいけど、未来も欲しいよ。…もっと言えば…。」

 昴は一瞬目を泳がせたが、紗弥に視線を合わせた。

「未来に一緒にいるために、一緒に生活していけるか試したい。」
「…と言いますと?」
「同じ家に住みたい。」
「…同棲?」
「そうなるな。だから、あー…あえてモノを挙げるなら、同じ家の鍵、か。」
「鍵ー!?そんなの私一人で決めてあげるなんて無理じゃん。」
「そうだな。…じゃあ、バレンタインの日にでも不動産見に行くか。」
「え?…ほ、本気?」
「いつだって本気だし。つーかさぁ…。」

 ぐいと腕を引かれて、収まったのは昴の腕の中だった。

「正直もう隠すの限界。隠してても何もいいことねぇもん。お前も俺も告白されては振り、告白されては振りの繰り返し。お前はどんどん可愛くなるし、そりゃ周りも放っておかねーよ。」
「そ、そんなの昴くんもじゃんか!」

 何故大の大人が抱きしめ合ったまま口論しているのだろう。そんなことを思ったが、紗弥はそのまま昴の背中をポカポカ叩いた。
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