ハナヒノユメ
「歩先輩!」

息を切らして、先ほど逃げ出した病室まで戻ってきた。

夕陽にじんわりと包まれている彼。

こちらを向く。

「先輩...?」

今までの虚ろな目ではなく、その瞳には光が宿っていた。

そうして、彼が微笑む。

初めて見せた、笑顔...。

「...よかった、来てくれた...。」

その、今までで1番はっきりとした、

心からの切実な声に、

私は涙が止まらなくなってしまった。

これも、まだ石井先輩だと思ってるのかな...。

でも、それでもいい。

「先輩...。

私が側にいますから...。」

そう言って、彼の手を握った。

そうすると、より一層、彼は嬉しそうに笑うのだった。
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