ハナヒノユメ
たまにでいいと言われたけど、結局毎日来てる。

だって、私のことを知っていてくれてるから。

なんて...そんな理由で、

私はつくづく嫌なやつだ。

ずっと石井先輩とかだって誤解され続けてたら、

逃げてたかもしれないなんて。

...ともかく、彼の調子は、少なからず差はあるようだった。

来ても反応がないときもあるし、顔色が悪いときもある。

でも、肩や手に触れると、それが一転して。

目がキラキラする。

それで、

「来てくれたんだね、ありがとう。」

って。

「もしかして、毎日来てくれてる?」

「はい。」

手を...握ってあげた。

それでもう片方の手には、いつものぬいぐるみが。

...離さないんだなぁ。

嬉しい...かも。

「夢なんだろうから、時間もよく分からないんだけどね。
気づいたら側にいてくれてる。
嬉しい。」

なんだろう...。

もうずっとここにいて彼と話していたい。

その方がいい。

現実逃避なのかな。

穏やかな顔の彼を見ていると、安心するから。

まるでこっちが夢を見ているみたいで。

「ありがとう...?
そんな、こちらこそ。本当にありがとう。」

「いえ。」

「桜には、感謝してもしきれないよ。
色々忙しい時期なのに、ここに来てくれて。」

別に...?

そんなのわりかしどうでもいいもん。

勉強なら、ここにいてもできるし。

進学なんて、どこでもいいの。

そう思える自分が、

父親に似ていて嫌って思ってたのに。

今はちょっと違う。

お人好しも悪くないかもって。

こうして丁寧にお礼とか言われちゃったら。

喜んでくれたら...。

私でも、役に立ってる...よね?
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