死のうと思った日、子供を拾いました。
「ん?」
ビリビリになったラッピング用紙を捨てようとしたら、ラッピング用紙にDVDケースがくっついていたことに気づいた。箱の後ろ側を包んでいた場所にあったから、さっきは壊さずに済んだのか。
それにしてもどうしてこんなものが?
テーブルの前に置かれていたテレビとプレイヤーの電源をつけてから、俺はケースを開けた。DVDをプレイヤーの中に入れると、すぐに再生ボタンを押した。
キッチンで、百センチメートルくらいの子供がガスコンロの火をつけたり消したりしている映像が映し出された。
手元にあったクッキーが砕けた。
間違いない。これは、夏菜が死んだ時の映像だ。
★★
楓はキッチンの隣にあったクローゼットを開ける。クローゼットの中に大我が閉じ込められていた。
頭を鈍器で殴られたかのような衝撃を受ける。
虐待? え、でも叫び声なんて聞こえた覚えが……閉じ込められいたから聞いてないだけだ。
あれ……閉じ込められていたなら大我は火を使っていない? つけっぱなしにしたのは親の方だ!
信じられない。息子を殺すつもりだったのか。不慮の事故に見せかけて。
「ひっ、いやだぁ」
大我は叫ぶ。
一体何があるのかと思った様子で、楓が後ろを見る。
ガスコンロの火が燃え広がって、木製の家具やベランダのそばにある植物など、部屋のあらゆるものに火がついていた。灰色の煙が天井に渦巻いて、ガスと真っ赤な炎が瞬く間に広がっていく。
楓は慌てて、大我の腕を掴んで走る。
ダメだ。この先は見ない方が良い。
だって二人で逃げているのに、楓は帰ってきていないんだ。絶対にこれから事件が起こる。でも、リモコンの停止ボタンを押せない。
大我が転んで、近くにある棚が落ちてくる。大我を庇って、夏菜は床の下敷きになる。
「あ、あああぁぁぁ!!」
最悪だ。やっぱり見ない方がよかった。
「何でだよ」
小分けにされた猫型のクッキーを一つ取って、弱々しい声で嘆く。
握りしめたら、クッキーは音をたてて割れた。
不毛だ。こんなことをしても、何も意味なんかない。ただただ、どうしようもない悲しみが募るだけだ。
それでも、どんなに不毛だと思っていても、どんなに嘆いても意味ないとわかっていても、嘆かずにはいられなかった。
「はぁ……」
死にたい。夏菜に会いに行きたい。夏菜のいない世界で生きるなんて、絶対に嫌だ。
でも、今死んで夏菜に会いに行ったら本当に口を聞いて貰えない気がする。
それに、死んだところで夏菜に会える保証なんてどこにもないし。
でも死んだら夏菜に会える保証がないからって葬式まで生きたところで、意味なんかないよな。それに夏菜が焼かれたり、骨になったりするのを見ていられる自信がない。
でも葬式に行かなかったら、夏菜に叱られるんじゃないか?
ハッ。夏菜はもういないのに、叱られるってなんだよ。
夏菜に叱られる環境がないから、こんなに悩んでるんだろ?
はあ。俺の心、すごいめちゃくちゃだな。