死のうと思った日、子供を拾いました。
「お。愁斗アイス美味かった?」
「うん」
「そうか、ならよかった。流希注文どうする?」
 愁斗の頭を撫でてから新太は首を傾げる。

「俺もラーメン食べようかな」

 新太がまるで信じられないことを聞いたかのように、口をあんぐりと開ける。

「お前……大丈夫か? 急にどうした? 頭でも打ったか?」
 思わず眉間に皺を寄せた。
「失礼だな。正常だよ」
 新太は勢いよく首を振った。
「いーや、絶対に正常じゃねぇ! 病院行くぞ」
「行かねぇよ‼︎」
「クッ、ククク。もう心配なさそうだな」
 俺を見て新太は喉を鳴らした。
 その様子を見て、俺はハッとした。

 もしかして俺の様子を確かめるためにわざとふざけたのか?

「あ。ごめん、新太。心配させすぎたな」
「いい。気にすんな。早く注文してこいよ」
「……ありがとう」

「愁斗は何頼む?」
 真希さんが椅子を引いて立ち上がった。
 チャーハンの器が空になっている。食べ終わったのか。

「俺もラーメンがいい」
「そしたら俺が二人分注文しますね。何がいいんだ?」
「味噌コーンバター」
 子供が好きそうな味だな。

「お子様ラーメンじゃなくて?」
 新太のツッコミを聞いて、愁斗は嫌そうに顔をしかめた。

「あの中に欲しいのないのか?」
 俺達の隣の席を見つめて新太は言った。

 隣の席には百四十センチメートルくらいの男の子と二人の大人がいた。三人家族か。子供は紫色のパーカーを着ていて、白いハーフパンツを履いていた。

 テーブルの上にはカゴが置いてあって、子供はそれを熱心に覗き込んでいた。カゴの中にはクワガタの模型や人形のお着替えセットにおままごとセットなどのさまざまなおもちゃが入っている。

 店の前でおもちゃを選ぶのではなくて、自分の席で選んだらおもちゃのカゴを店員に返す仕組みなのか。子供は一度どれかを選んだのに、急に違うおもちゃがいいと言い出すこともあるから、確かにその方が良いのかもしれない。でも店員が見ていないと万が一盗まれた時に対処できなくないか? まあそもそもおもちゃなんて盗む人があまりいないだろうから、別にいいのかもしれないけれど。

「うん。俺が欲しいのはそういうのじゃない」
 じゃあ何が欲しいんだ?
 愁斗はおもちゃのカゴではなく、子供を見ていた。……友達が欲しいのか?
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