冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 






「あなたももう、来年には十六になるのね」


 初夏を迎えた庭先では、向日葵の花が揺れていた。

 自分よりも頭ひとつほど背の高いロニーを眩しそうに見上げたリリーは、グラスゴーでの地下牢以来の再会に胸を躍らせている。

 今日、ロニーはリアムの補佐という名目で、リリーたちの住む邸を訪れているのだ。

 それはロニーと話をしたいというリリーの願いを、リアムが渋々聞き入れて実現の運びとなった。


「でも、地下牢であなたがロニーだと知ったときには本当に驚いたわ。あの孤児院は……今、どうなっているのかしら。あなた以外の、エマや他の子供たちは元気に暮らしているのかしら」


 心配そうにロニーを見上げたリリーに対して、ロニーはニッコリと屈託のない笑みを浮かべてみせる。


「孤児院の子供たちは今でも元気に暮らしていると聞いています。エマも、働き口が決まったって、司祭様が言っていました」

「そうなの……!」

「それに、リリー様のご意志を継いで、アイザック国王が孤児院への支援も継続してくださっているんですよ。リアム様も相変わらずご支援くださっているし、きっと孤児院で暮らす子供たちも、大丈夫だと思います」

「え?」


 ロニーの言葉を聞いたリリーは、思わず首を傾げてしまった。


「リアムが相変わらず支援をしているというのは、どういうこと?」

「え?」


 そしてロニーもリリーからの質問に、驚いた様子で目を見開いて首を傾げた。


「もしかして、ご存知ないんですか?」


 ロニーの言葉に、リリーはまた頭の上にクエスチョンマークを浮かべてしまった。

 そんなリリーを見て、ロニーは一瞬、口篭ってから意を決したように話を始める。

 
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