冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 

「俺の左目は、母譲りの色なんだ」

「お母様の?」

「ああ。母はこの左目の瞳と同じ、オリーブ色の瞳だった」


 リリーの頬に掛かる髪をすくってキスをしたリアムは、今度は愛おしそうにリリーの髪を優しく撫でる。


「そして前にも少し話したが、右目のグレーの瞳は父譲りだ。だから俺は……騎士団長という任についてからは、母譲りの左目を隠してきた」

「どうして……?」

「それは俺が騎士団長として見るものを、母が見たら悲しむだろうと思ったからだ。実際、多くのものの命が消える場面をこれまで何度もこの目で見てきた。だから俺は、いつでも眼帯をつけていた」


 リアムの胸に秘められていた想いを知ったリリーは、そっと彼の胸に頬を寄せた。

 リアムの母もきっと、彼と同じように平和を願う優しい心を持った人だったのだろう。

 今、リアムの話を聞いただけで想像することができたリリーは、とても穏やかな笑みを浮かべた。


「とても立派な、お母様だったのね」


「……ああ。オリビアの母であるきみと同じように、とても気高い心を持った母だった」


 そう言うとリアムは、もう一度リリーの髪に口づけた。

 彼の母の気高い心は、彼の息子であるリアムに受け継がれている。

 そうして繋がれた命はきっと、またどこかで誰かを救う道標となるのだろう。


「リアム……。好きよ、大好き。これからはずっと、私たちのことを離さないで……」


 言いながらリリーはリアムの頬に、初めて自分からキスをした。

 そんなリリーを、リアムは愛おしげに見つめている。

 そして小さく寝息を立てるふたりの愛の結晶は、幸せな夢を見ているのか、眠ったままで「ふふっ」と声を零して笑った。


「俺も、リリーを愛している。そして、同じように娘のオリビアを愛している。もう二度と、ふたりのことは離さない。だから、これからもずっと、俺のそばで笑っていてくれ」


 交わされたキスは誓いの証。

 今、三人で新しい朝を迎えられることにリリーは幸せを感じながら、愛しいふたりのそばで花が咲いたように微笑んだ。




 
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