ベジタブルハンバーガー

「わざわざ連絡、ありがと
じゃあ、帰るね、私」



「梨花、今どこに住んでんの?」



「なんで?」



関係ないよ、アツシには



「いや…
幸せにやってるのかなって…
…
ここで会った彼でしょ
梨花、ずっと好きだったの…
…
前に一緒に働いてたっていう」



ドキン…

気付かれてた



「私が幸せかどうか
アツシには関係ないでしょ」



「ごめん…
幸せにできなくて…」



「アツシが幸せなら、それでいいよ
再婚するの?」



「再婚?」



「不倫相手と再婚しないの?」



「しないよ」



「なんで?
離婚したんだから、すればいいのに…」



「本気じゃなかったから…」



「え…」



「別に本気じゃなかった
いつも相手違ったし…
…
もっと嫌いになった?
オレのこと」



「どーゆー意味?」



「梨花にずっと言いたかった
…
心の浮気と身体の浮気
どっちが罪だと思う?」



「え…?」



「どっち?」



「そんなの…」



なんで、そんなこと聞くの?



「心の浮気と身体の浮気
罪なのは…
…
本気になった方だよ
…
梨花、ずっと彼のこと
本気で好きだったでしょ
…
オレと結婚する前も
結婚してからも
梨花の心の中には彼がいた
…
オレの前で笑ってても
オレに抱かれてても
彼のこと考えてたでしょ
…
自分の気持ち抑えるために
オレと結婚したでしょ
…
ずっと
辛かったでしょ
気持ち隠すの
…
いつ離婚してって言うかなって
ずっと待ってた
…
梨花こそ幸せになりなよ
離婚してやったんだから…
…
嫌味でも何でもなくて
梨花には幸せになってほしい
そのために離婚した
…
オレは一生幸せにできないから」



全部

バレてた



「ごめん…」



「オレ、好きだったよ
梨花のこと
…
素直で従順で
オレのために変わろうとしてくれてた
…
でも真っ直ぐで芯があって
梨花の中にはずっと
彼がいた
…
オレが好きになった梨花は
オレのために無理してる梨花だった
…
オレのこと
好きになろうと努力してる梨花だった
…
今の梨花が
ホントの梨花でしょ
…
いつだって
真っ直ぐ
梨花の先にいたのは
彼だった
…
髪、似合ってる
短くしたんだね…」



ズキン…



ずっとバレてないと思ってたのに

ずっとバレないようにしてたのに



全部バレてた



「私のこと、よく知ってるんだね」



「うん
ずっと、見てたから
梨花がオレのために変わっていくの
ずっと見てたから
…
梨花に働いてほしくなくて
梨花に少しでもいい生活させたくて
仕事するしかなかった
…
愛し方を間違ってた
このマンションに閉じ込めてたら
ずっとオレのものでいてくれる気がしてた
…
ごめん…
ずっと寂しい思いさせて…
ずっと辛い思いさせて…
…
なんて…
年明けからこんな話して
ごめん…
…
最後も
ちゃんと話できなかったから…
…
今年は
きっと幸せになれるよ、梨花」


そう言って
アツシが口をつけたマグカップは

私のものだった



「ごめん、それ私の…
処分するの忘れてた
捨てておいて…」



「捨てられない
だって梨花が選んでくれたのじゃん
オレのと色違いでって…」



「うん…
そーだったね
…
ごめん
帰るね…
…
わざわざ連絡してくれて
ありがと…」



アツシの顔が見れなかった




「梨花…
…
最後にひとつ聞いてもいい?」



帰ろうとした私の背中に

アツシが問いかけた



「なに?」



「オレたち
子供いたら
離婚してなかった?」



ズキン…



「わかんない…
…
いなかったから…」





< 541 / 575 >

この作品をシェア

pagetop