大切な芸人(ヒト)~ヒーローと始める恋の奇跡~
当日、オレはソワソワしながら準備をした。

清羅さんとデートするときでさえ、そんなに緊張しないのに。

今日は異常なくらい緊張していた。

オレは車でアイツの家まで迎えに行った。

「わりぃな。ありがとう!」と言ってオレの横に乗るコイツ。

シートベルトを締めたのを確認してオレはゆっくり車を走らせた。

今日の企画書はさすがに無い。フリープランの予定だ。

まあ、コイツのことだし、何か考えてはいるんだろうけど。

とりあえず少しドライブすることにした。

少しして、コイツから先に口を開いた。

「お前と出会う前さ、俺はソロとしてそれなりにお笑いと向き合ってたつもりだったんだ…」いきなり始まったコイツの過去話。

ほんとは聞く気なんて持てないはずなのに、何故か今は興味を持ってしまっていた。

「…毎日、何か違うな、これは俺が望んだお笑いなのか?って思ってた。人気が出ても、何故か素直に喜べない部分があったんだよな。そんな時だよ、お前に出逢ったの…異例の経験を持つ新人で熱を持った男…俺の感じたこと無いオーラがそこにはあった。俺は確信した!今の俺に足りないものを持ってるって」そこまで言って一旦、話を区切った。

「…それでオレとコンビ組むこと決めたの?」とオレが聞くと、頷いた。

そっか…コイツだって苦しんでた時期があったんだな。

そう思うと、少し複雑な気持ちにはなった。

でも、お互いに後悔はなく、今の生活も楽しめてるんだから判断を誤ったわけでは無いよな?

「…お前と組んでさ、色々思ったこともあったよ。でも一番は楽しかったんだ。お笑いをやってる自分が。あの時からずっと俺はお前のファンなんだ。だからさ、お前を一人占め出来てるみたいで隣にいれたのがスゴく幸せでな」と嬉しそうに笑うもんだから、オレもつられて笑ってしまった。

「だからさ、俺はこれからも味方だし、ファンだからね~」とコイツは言う。

「ありがとう!」とオレが言うと

「…もしさ、エージェント契約切られたらさ、ウチ来れば良いから!無いと思うけど。問題とか起こすタイプでも無いしな」と言われた。

「…で、ベンチャー企業とは聞いたけど、実際はどんな仕事をメインとしてるんだ?」とオレは聞いてしまった。

「…メインはクラウドサービスを専門とする仲介業者だよ。今はネット1つで何でも出来る時代になっただろう?

そこで。ウチに案件が依頼されたら、受け手側の人から条件にあった人を選んで、コンタクトを取る。そして、双方の合意が得られたら仕事をするといった、簡単に言うと、マッチングを斡旋する企業ってとこだな」と言われた。

機械にあまり強くないオレには難しい話だったんだのでイマイチわからず首をかしげてしまう。

そしたら、「例えばな、お前がお笑いのライブしたいけど、会場見つからない!って俺に依頼するとするよな?そしたら俺が空いてるライブ会場を探すわけ。キャンセルになってしまったとか、諸事情で出演出来る人がいなくなって出演者を募集してる会場があるとするだろう?そう言う時に俺はお互いにコンタクトを取り、どうか?と斡旋、そして双方が合意したら仕事として成立そんな感じだよ!これでなんと無くは理解出来たかな?」とコイツは言う。

なるほどな。コイツの説明で俺は意味を理解した。

「一応、企業名はあるんだろう?」と俺が聞けば

「もちろんだよ!企業名はSHINeeだよ」とコイツは言う。

「えっ?オレらのコンビ名…」とオレが驚いて言うと、

「大切にしてきたものだから」と笑う。

そっか…コイツらしいな。

オレは純粋にそう思った。

「ありがとう」とオレが言うと、

「こちらこそありがとう」と返された。

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