人魚の愛
あれからアレンとは頻繁に会うようになっていた。

なんでも、自身はまだ未熟だから私に教えを乞いたいとか。

それなら王城の教育係が居るが、王城内は派閥争いが激しく、あまり信用できないらしい。

この王子様も不憫なものだよ。


そんな関係がかれこれ数年も続いた。


いつしか、あどけない少年は青年となり、王となってもからもこの不思議な関係は続いている。


とある夕暮れ。

いつものように王城で起こった話を聞いていると、ふと会話が止まる。

アレンは躊躇う素振りを見せながら、おずおずと問うてきた。

「...ねぇ...君は、セイレーンなんだね......?」

......。

「アレン、セイレーンには本来名前が無いのを知っているかい?
......私に名前をくれないだろうか?」

「......アイリス。
君には虹の女神の名がぴったりだよ」

それ以上言葉を交わすことは無かった。



――人魚の掟
人魚の『名』は自身の最愛と定めた者からつけられる。
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