破 恋

みか◾◾

莉子に山田と桜田の報告をした。

だが、千里の現状は
話していない。

舜二とも話して
莉子には話さないことを決めた。

だからと言うわけではないが
二日に一度は、千里の病室に
顔を出している。
野上課長が、一緒の時も。

ベッドの上の千里は
青白くて精気が無いように見える
千里の母親にも言いたいことは
あるが·······

この人を今更責めて····も
と我慢をする

今日も
「千里、早く目を覚まして。
莉子は、上海で毎日頑張ってるよ
いつまでも寝ていると
莉子の方が出世しちゃうから。」
と、話をする。

莉子に二人の報告をしてから
10日が過ぎたが
千里は目覚めていない。

栄養と言っても点滴だけだ。

千里は、見た目からも
かなり細くなっている。

手首には包帯が巻かれているが
抜糸も終わったようだ
神経が切れていなかったのが
幸いだった。

莉子もまもなく帰国する
今は最終段階に
入っていると報告があった。


更に····5日を過ぎた時····
千里の目がゆっくりと開いた。


丁度、その場に出くわした私は
「「千里っ、せんりっ」」
と、千里のお母さんと呼ぶ。

目を開いたり、閉じたりを
繰り返す千里
その間にお医者さんを呼ぶ

「西原さん、わかりますか?」
と、先生から言われると
コクンと頷く千里。
「ここがどこだかわかりますか?」
と、言われると
「病院ですか?」
と、小さな声で答える
「そうです。病院です。
なぜ、病院にいるのか
わかりますか?」
と、訊ねられると
首を横にゆっくりふった。

千里は、覚えてないのだ。
と、思っていると
「ご自分の名前は?」
と、言われて
首をかしげる千里
「·············」
「わかりませんか?」
と、先生が訊ねると
「··········は····い····」
と、答える千里に
千里のお母さんは倒れそうになり
慌てて看護師さんと支える。

その後も質問されるが
自分の年齢も仕事先も答えられず

「こちらの方がわかりますか?」
と、先生がお母さんを見せるが
じっと見てから首をふった。

当然、私の事もわからない
と、答えた。

泣き崩れるお母さんを
病室から出して
休ませた。

お医者さんの話では
思い出したくないと脳が判断したのか
あの時の精神的なショックによるものか
わからないと言われた。

今後思い出すかは、
不明との事だった。

私は、その事を舜二に
報告した。

後5日で
莉子が帰国する。

この状態を知って
  どうなるのだろう·······
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