君は愛しのバニーちゃん
※※※





「なぁ、なぁ〜。最近、瑛斗ってやけに付き合い悪くね? 前は合コン三昧だったくせに、もう二カ月は行ってないよなぁ……。お陰様で、俺も枯れる一方だよ……」


 恨めしそうな顔を見せながら、首を直角に曲げて俺の顔を覗き込む健。まるで、壊れたブリキの玩具だ。


「なんだ……健、知らないの? 瑛斗はね、今本気の子がいるから無理だよ」

「なんだよ、チクショー! やっぱ、彼女がいるのかよっ!」

「いや……。まだ、彼女ではないらしいんだけどね?」

「えっ!? あの瑛斗が、狙った女とまだ付き合ってないとかっ! そんな事あんの!? えっ! 大和(やまと)、その女見たことある!?」

「いや、『うさぎちゃん』って名前しか知らない」

「……あっ! その名前! 俺もこの間聞いたっ! おい、瑛斗! 誰だよ、その『うさぎちゃん』て!?」


 興味津々といった感じで、俺を見つめる健と大和。


(……そんなに見つめたところで、お前らに会わせる気なんて、微塵もないけどな)


「……史上最強に可愛い、天使だよ」

「……えっ!? お前が、天使とか言っちゃうわけ!? 俺のエンジェルを、バカ呼ばわりしたお前がっ!?」


 チラリと二人を流し見れば、さも驚いたような顔をさせている健。大和はといえば、それは面白そうにニヤニヤとしている。


「へぇ〜。随分とご執心なようで。……で、いつそんな子と出会ったの?」


(フッ……。そんなに聞きたいなら、聞かせてやろうじゃないか。……あの、天使が舞い降りた穏やかな午後の日のことを……)


「あれは……。満開に咲き誇っていた桜が、見るも無残に全滅した頃の、ある日の午後だった……」

「なんだよ、そのナレーションみたいなの。……しかも、下手すぎ」

「煩い! 黙って聞けっ!」




 ——あの日。
 バイトでやっているモデルの仕事がドタキャンになり、大学に行く気にもなれなかった俺は、そのまま真っ直ぐ自宅に帰ることにした。

 その日は何の気まぐれか、いつもなら絶対に通らないはずの道を歩いて帰っていた俺。いや、無意識に導かれていたんだと思う。
 普段なら絶対に歩かない時間帯に、絶対に通らない道のり。あの時は気付けなかったけど——。

 あれはきっと、運命だったんだ。

 ふと、何気なく通りがけに公園を覗くと、天使のような無邪気な笑顔を見せる、それはそれは可愛い女の子がいた。立ち漕ぎでブランコに乗る姿は、羽を広げて天を舞う天使のよう。
 俺は吸い寄せられるようにして天使へと近付くと、そこで、雷に打たれたかのような衝撃を受けた。


『キャーーッ!!! 大丈夫ですかっ!!?』

『……えっ!!? 何この人!!? 今、自分からぶつかって来たよね!!?』





「……いや、それただブランコにぶつかっ——」

「煩い! 黙って聞けっ!」


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