別れの曲


隣の席の長田くんは毎日のようにいつ見ても心地良さそうに寝ている。

校門指導で「校則違反だ!黒染めしろ!」などと口うるさい教師に地毛証明を華麗に叩きつけた彼の髪は栗色のサラサラしたマッシュショートで、きれいに整えられ清潔感がある。

時折風に吹かれてなびく彼の髪からはふわっと女性もののシャンプーの香りがする。
「姉さんが俺を実験台にするんだよ」
いつだったか、美容師として働く長田くんのお姉さんが男の子のお得意様をゲットしたい!と意気込んで俺の髪をいじるんだ、なんて呆れながら同じクラスの女の子に話しているのを聞いた。

あ、いや盗み聞きしたわけじゃないよ?教室で楽譜の整理をしていたらその話が耳に入ってきただけ。

どの授業でもお構いなしに気持ちよさそうに眠る彼を見て、どの先生も『長田ほどやる気のない奴は見たことがない。皆は長田のようにはなるなよ』と口を揃えて言う。
だけど私はそんな自由奔放な彼が羨ましいとさえ思っている。


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