怖がらないで
程なくして俺たちのライブの打ち合わせは俺が寝転んだ状態で始まった。

座ろうとするとKILLERも蓮も全力で止めに来るから心苦しいんやけど寝転んだままでおる。


「ライブは久しぶりだからキャパは大きめなんだけど、360°じゃなくて180°のホールでやろうと思う。」


まだ会場も決まってなければする日も決まってない。

そんな状態での話の内容はもっぱら俺のことばかり。


「大毅の移動の距離今回どうすんの?」

「久しくしてないから短めの方がいいんじゃない?」

「別にええで?全然元気やし」


寝転んだまま言っても説得力ないんやろうけどみんな俺の目を見てうんうんと頷いてそれなら…とまた考え始めた。

今回の話し合いは俺の意思がどこまで大丈夫だと思っているのかの確認と決定する時にここまでなら大丈夫だと事務所と会場に言うためのもの

俺の体のことは関係者の方はみんな知っとるし、会場側さんはそんな俺のためにと車椅子やらせり上がりの時の手すりやら怪我をしない工夫までしてくださるから信頼しとる。

KILLERも俺が動かんくてもええようにおぶって移動してくれたり、ファンには仲良いねで収めれるようにしてくれてて

この話し合いの必要性は俺たちにしか分からんもんもあるんやろう


「じゃあざっとこんな感じで、会場とセトリについてはこっちで進めるので新曲の方よろしくお願いします」


蓮の締めの合図と共に部屋の空気が少し軽くなった。


「大毅。今日病院寄る?」

「いや寄らんでええよ」


ソファから少し体を起こして蓮と話す。

KILLERのみんなは落ち着いたらまた会おうと言って楽屋を出ていった。


「マネさんの車で帰ろうか」


帰りはいつも2人で歩いて帰ってた。

距離が遠かったら車やったけど、2人でこっそり手を繋いで帰るのが楽しみやったのに、今の俺じゃそれすらも出来ない。


「うん」


蓮の背中に乗り車に向かう。

やっぱり体調悪いんやな俺…

背中に乗っ取るだけやのに視界がグラグラ揺れる感じがする。

車に着くとマネさんが既に車の後ろをフラットにしてくれていて寝転べた。

蓮が隣に座って手を握ったり頭を撫でたりしてくれながら帰宅。

マネさんは明日の様子で仕事を調整すると言い残して帰っていった。


「…ごめん…」


ベッドに寝かされて色々看病されたあと蓮が横にいてくれとる。

そんな中俺の中は罪悪感でいっぱいで、謝るしか選択肢がなかった。

呼吸が早くなる感じがするけどお構い無しにごめんと言う。

蓮はギュッと抱きしめてくれて


「謝る必要なんてないよ。大毅は頑張ってるんだから」


そのままキスされた。


「確かにたくさんの人に心配をかけてるかもしれないけど、大毅の周りにいる人は迷惑とか邪魔だとかそんなこと考えるような人居ないよ」

「だから、謝らなくていい。
どっちかって言うと、ありがとうの方が嬉しいかな」


頭をふわふわ撫でられてまた力強く抱きしめられる。

安心する感覚がして、自然と頬が緩む。


「んふふ、ありがとう。蓮」

「どういたしまして。大毅」


お互い名前を呼びあって、眠りについた。





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