ボーダーライン。Neo【上】
 空港に到着し、諸々の手続きを済ませてから機内に乗り込んだ。

 窓際から、美波、あたし、秋月くん、カイくん、の順でシートに座る。
 
 二十三時発の便だったせいか、美波は座り込むと、ものの数分で眠りに落ちた。夕方まで仕事をして、それからの旅行だから疲れがあるんだろうな、と思いつつも、少し退屈してしまう。

 眠らなければいけない事は分かっていた。が、脳が興奮して、それどころじゃない。

 まるで遠足前夜の小学生みたいだ。あたしは小さく笑い、鞄から旅行のマップ本を取り出した。

「ねぇ、秋月くん。ここなんだけど」

 付箋の貼ったページをめくり、隣りの彼を見る。

 秋月くんは自分専用のアイマスクを下げ、ちょうど眠ろうとしたところだった。

「ってやだ、寝ないでよっ」

「え?? ちょっ。先生、マジ勘弁してっ」

 あたしは手を伸ばし、彼のマスクを外した。
 
 隣りの秋月くんまで眠ってしまえば、この機にひとり取り残されたような、心細さを感じてしまう。

「美波さんは?」

 言いながら、彼はあくび一つ。

「もう爆睡してる。仕事帰りだったから疲れたのね」

「そっか。じゃあ先生も寝た方がいいよ?  カイも寝てるし。って事でオヤスミ」

 再びアイマスクを下げて、秋月くんが背を向けた。
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