ボーダーライン。Neo【上】
 ーーもしかして、秋月くんが?

 気になって、学校で確かめる事にした。

 昼休み。購買でお昼を買った帰り、タイミング良く、秋月くんを見かけた。彼は一人だった。特別棟で誰かに電話をかけていたので、少し待ってから声をかけた。

「秋月くん」

「……先生」

 彼は振り返り、目を見張る。よほど驚いたのか、少しだけ挙動不審だった。

「え? ど、どうしたの? 鞄なんか持って」

 お昼を買った帰りに()けてきた、とは言えなくて、あたしは用件だけを伝える事にした。

「き、昨日の事なんだけど。いま……ちょっといい?」

 秋月くんは、焦ってキョロキョロと辺りを見回した。あたしは言わずもがな、キョトンとなる。

「なに? 秋月くん。どうかした?」

「や、あのさ。学校ではあんまり、プライベートな事言わない方がいいよ?」

 意味を理解し、ハッとなった。

「え? あっ! そうよね、ごめんなさい」

 秋月くんも周りの目とか気にするよね、と思い、焦ってサイドの髪を耳にかけると、彼は不思議そうに瞬きした。

「え、いや。俺は別にいいんだけど。先生がさ、困るんじゃない? 立場とか。有るんだし」

 ーーもしかして、あたしを気遣ってくれているの?

「あたしは……別に」

 言いながら、あたしは俯いた。秋月くんの言動のひとつひとつが嬉しくて、また胸が熱くなった。
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