ボーダーライン。Neo【上】
「迷惑とか、そんな事……全然思ってないし。むしろ……」

 ーーなに……?

「先生が俺を頼ってくれたの、嬉しかったから」

 その瞬間、きゅんと胸が締め付けられた。

 ーーあ。どうしようっ。

 あたしは唇を噛み、再び俯いた。

 嬉しくて、泣きそう……

「……じゃ。おやすみ」

 パタン、と玄関の扉が閉まった。

 へなへなと力が抜け、ベッドの上に座り込んだ。

 ーー何でそんなに、優しいの?
 あたし、こんなに嫌な女なのに。

 零れる涙を拭う事もせず、両手で口元を押さえていた。

 やがてゆっくりと立ち上がり、玄関へ向かう。

 ガチャン、と鍵を掛け、あたしはその場にしゃがみ込んだ。

 ーーあたし。もう、我慢出来ないかもしれない。

「……っく、うっ……んっ」

 秋月くんが好きで好きで、苦しくて。あたしはそのままの状態で、暫くの間泣き続けた。

 翌日。風邪をひいたせいか、熱が出た。休みの前日だったため、薬を飲んで何とか出勤した。

 朝、家を出る前に気が付いた。昨夜、ETOILE(エトワール)で沢山飲んだ筈なのに、お財布の中身が全く減っていない事に。あたしは、あれ、と首を傾げた。
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