ボーダーライン。Neo【上】
 ◇ ♂

 通話を終えたスマホを見つめ、僕は顔をしかめた。

 ーー幸子のやつ。一体どういうつもりなんだ? てっきりもう一度会う為に持ち帰ったと思ったのに、そうじゃなかったのか?

 彼女の意図が分からず、ため息までもらす。

 単純に鍵を掛けるために持ち出さなければならないのなら、下のコンシェルジュにでも預ければいいと思うのだが。

 僕の立場上、変に勘ぐられるのを避けたとも考えられる。だとしたら、会うための手段では無く、本当に郵送でもして返すつもりだったのだろうか?

「何やってんの、ヒノキ」

「え……?」

 向かいに座った従兄弟のカイが、呆れて息をついた。本当にどうしようもない、と匙を投げているようだ。



 あの後、僕は休日を無駄にしないためにとにかくは外出しようと車を出した。

 何処に行こうか考えを巡らせ、昨日のクラス会からふと郷愁の念に駆られた。

 着いた先は母校である西陵(せいりょう)高校。

 卒業生という名分で来賓用玄関から堂々と出入りし、当時の担任教師である斉藤先生、ーーもとい今は結婚から性が変わったので高村先生だがーーと会った。

 先生と当たり障りの無い世間話をしていると、僕と同様に母校を訪れている女の子がいて、僕はその子を見て声を掛けた。
< 262 / 269 >

この作品をシェア

pagetop