monochrome
…………………

橙「まだまだ手加減してんで。
本気出したら、俺の身一つでお前ら2人簡単に殺れるけど、このまま続けるか?」
〈…行くぞ、〉

「あの、あなたは…」
橙「…怪我、お大事にな」
「待って、!」
…………………

…あの時助けてくれたお兄さん。

「やっぱり直樹だったんだ」
橙「へ?天咲なんか言うた?」

ここへ来た時から薄々気づいていたけど。
あの時助けが来なかったらと思うと、今も少しだけ怖さを感じる。
だからあのお兄さんは私のヒーローだった。
その人はミリタリージャケットを羽織っていた。
ちょうど、こんなような形のもの。
直樹は服を沢山持っているから、この服を着ているのは初めて見た。

「直樹のこの服初めて見た」
橙「せやねん。久々に着たわぁ」
「えぇ、似合ってるからもっと着ればいいのに」
橙「…この服着てた時にな、女の子が悪い男に連れてかれそうになっとってさ。
慌てて助けたんやけど、名乗れるような明るい仕事をしてるんとちゃうからさ。
その女の子に大丈夫やった?ってかけ寄らんと、そのまま逃げてきてもうた。
その事を思い出してまうねん。これ着ると」

そうか、直樹はあの女の子が私だって気づいてなかったんだね。

橙「って俺天咲になんちゅう話してんねやろ。
ごめんな、忘れて忘れて!」
「ううん、その話聞けてよかった」
橙「…ほんま?」
「うん。直樹が助けに来なかったら、女の子はどんな目に遭ってたか分かんなかったんでしょ?
大人しくしろって言われたのに、女の子は1人突き飛ばしちゃったわけだし」
橙「そうそう、そのおかげで俺も楽に倒せたわ…って、え?」
< 61 / 134 >

この作品をシェア

pagetop