キミの世界で一番嫌いな人。




「ねぇ明日の花火大会、浴衣で行こうね!」


「ええ、面倒だよ。あたし普通にTシャツショーパンのつもりだったんだけど」


「なにそれつまんな~い!そんなんだから彼氏できないのよ!」



すれ違う女の子の会話ですら暑い。

早くクーラー、クーラー、呪文のように唱える。


そもそも私の格好が暑いのだ。

ショートパンツを履くわけにもいかないし、薄手のTシャツも透けたらやばいから駄目。



「浴衣かあ。…今年は無理そうだなぁ」



ダボッとした大きめの七分丈パーカーに、黒のサルエルパンツ。

極めつけはスニーカー。


一応は男の子に見えてるはずだ。



「あっ、おばあちゃん?うん!元気元気!」



家に到着するなり、祖母からの電話。

田舎に暮らす祖母はパワフルなおばあちゃんで、いつも私を気にかけてくれる。


彼女は母のお母さん。

昔から彼女に母の話をたくさん聞いたものだった。

私は母によく似ていると言われる。


今は男の子になってるよ、なんて伝えれば腰を抜かしちゃうんだろうな…。



< 67 / 340 >

この作品をシェア

pagetop