九羊の一毛



挙式後、会場の外へ出て記念撮影という流れになった。
幸いにも快晴。五月晴れの中、無事に終えられて本当に良かった、と内心ため息をつく。

もっと寄り添うように、だの、にっこり笑って、だの、指示を受けながら集合写真を撮り終えた。
玄くんが友人に捕まっていたところで、横から声が掛かる。


「羊、おめでとう」

「カナちゃん……! あっ、津山くんも!」


淡いブルーのドレスが彼女の雰囲気によく合っている。カナちゃんの隣で「おめでとう」と笑う津山くんは、スーツ姿ということもあってか、すっかり落ち着いて大人びた「男性」になっていた。

二人が高校卒業後に付き合い始めたというのは、カナちゃんから聞いてはいた。
大学が違うとなかなか会う機会も少なかったけれど、同窓会などで会う度に惚気は増えていって。四年間付き合い続けた後、つい最近同棲し始めたとか。


「二人とも忙しい中本当にありがとう……久しぶりだねえ」

「ね、ほんとにいつぶりだろ。そっちこそ、またこれから忙しくなるじゃない」

「あはは。うん、でも幸せなので……」

「狼谷くんもなかなかだけど、羊も大概だよね」

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