九羊の一毛
それと、と付け加えて彼を見上げる。
「いつも私のこと手伝ってくれてありがとう、助かってます」
プリントを貼る時も、私が日直の仕事を引き受けていた時も。
狼谷くんは何だかんだで手を貸してくれた。嫌な顔一つせずに、そうするのが当然のように。
勉強だってそう。カナちゃんやあかりちゃんは私のことを心配してくれていたけれど、結局彼のお世話になりっぱなしだ。
「……羊ちゃんは、変わってるよね」
「えっ」
ぷい、と顔を背けて、狼谷くんが呟く。どこか拗ねたような、居心地が悪そうな、そんな口ぶり。
気に障ることを伝えてしまっただろうか、と不安になった。前もそうだったけれど、私なりに彼のいいところを精一杯表現しているつもりが、いまいち受け取ってもらえない。
「羊ちゃんの方が真面目でしょ」
「全然だよ! 今日も英語の時間ちょっと寝ちゃったし……宿題も、朝学校来てからやったし……」
一日を振り返って、自分で言いながら気分が落ち込む。
カナちゃんに少しだけ答えを教えてもらっちゃったのは流石にズルだからもうしない、と一人心の中で誓っていると。
「ははっ」