九羊の一毛


去年同じクラスだった人の名前を口で並べながら、あるところに目がとまった。

隣から「あ、俺四組だわ!」と声が聞こえる。
彼は彼で自分のクラスの面子を確認しているようだ。その真剣な横顔に水を差すのもはばかられて、俺は一人考え込む。


(しろ)(ひつじ)?」


苗字も下の名前も漢字一文字。珍しいな、と首を捻った。


「ああ、それ最初は読めないよな。つくもさんだよ。白って書いて、『つくも』」


俺の呟きを拾った友人がそう教えてくれた。去年同じクラスだったそうだ。
へえ、と思わず息を吐く。何だか賢くなった気がする。

玄は相変わらず遅刻ギリギリに教室へ入ってきて、クラスメートからの第一印象を早速下げにかかっていた。本人はそんなつもりないんだろうけど。

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