九羊の一毛


朱南ちゃんとそんな会話を交わしながら、教室内をぼんやり眺める。

後ろの壁には「卒業おめでとう」という文字と共に花の装飾が施されていて、去年自分たちも二年生の時に先輩の教室を飾ったなあ、と思い出した。年度末、それが文化委員としての最後の仕事だった。

結構高い場所に貼らなくちゃいけないから、玄くんがほとんどやってくれて。私は下から飾りやテープを差し出す係だった。


「……羊?」


懐かしいな。もう一年経っちゃったんだ。
やっぱり、文化委員って大変だ。彼とやっていたから、彼が協力的だったから二年生の時はそこまで気にならなかったけれど。

というのも、実は三年生でも一年間、私は文化委員を務める羽目になった。今年もジャンケンで負けて、半ば強制的に。
男子の方の文化委員は結構――なんというか、自由な人で。委員会は出るけれど、あんまり協力的じゃなかったから正直かなり辛かった。


「羊、どうしたの」


一人物思いに耽っていると、朱南ちゃんが軽く私の肩を揺らした。


「あはは、ごめん。色々思い出すとしんみりしちゃって」

「分かる~~。いっつも雑用押し付けてくる森先生ですら愛しくなってきちゃうもん」


うーん、それはどうだろう。
とりあえず苦笑しておいて、私は視線を戻した。

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