九羊の一毛



「とにかく本当に良かった。やっと落ち着けるわ」


キッチンでお茶を淹れながら、お母さんが笑う。
私は未だにパソコンの前に張り付いて、画面をスクロールしていた。


「もー、何回確認するの。ほら、お茶はいったよ」

「うん……」


だって、ネットの合格発表ってなんか呆気ない。本当に大丈夫かなって、不安になっちゃう。
お母さんに促されて、私はようやくリビングのテーブルについた。

午前十時。今日は公立大学の合格発表日だ。
私は結局、県外の大学を受験した。カナちゃんが第一志望に置いていた県内の公立大学は、私にはやっぱりレベルが高すぎた。一つランクを下げて、安全圏の大学を受けることにしたのだ。

決して本番に強いとは言えない自分だから最後まで緊張したけれど、何とか合格できて、ほっと一息ついているところだった。


「昼休みの時間、お父さんから電話かかってくるかもね。昨日の夜、『眠れない』って言って、羊より緊張してたから」

「あはは……」


昨日は自分もいっぱいいっぱいで大変だった。
でもそれは玄くんも同じだったみたいで、彼は珍しく弱気な声で電話をかけてきたのだ。

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